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ボードゲーム会魔王の告知ブログです。

「穏やかに微笑んで、机の下で蹴り合おう――プエルトリコをBSWで遊んでみた。

 
ボードゲームの話。今回紹介するのは傑作と名高い『プエルトリコ』。



 
噂にたがわぬ傑作でした。

どんなゲームか。舞台はスペイン領プエルトリコ。プレイヤーはプランテーションの経営者となって、生産の規模を拡大しながら勝利点を獲得していく。終了条件を満たした時点でもっとも勝利点を稼いだプレイヤーが勝者となる。

小野卓也『ボードゲームワールド』によれば、戦争というテーマはドイツではあまり好まれないということだが、植民地での奴隷的労働は問題にならなかったのだろうか。

しかしまぁ、面白いのだからしょうがない。

プレイヤーが生産できるものは、麦・インディゴ(染料)・砂糖・タバコ・コーヒーの五つ。これを、

農地の開拓&加工施設の建設⇒農地・施設への人員配置⇒生産アクション

というサイクルで生み出していく。生産物の使い方はおおまかには二つある。すなわち、

  1. 本国への出荷⇒勝利点ゲット!
  2. 市場への販売⇒お金ゲット!

 
このうち、お金は何に使うかというと、建物を建てる時に使う。というか建物を建てる時にしか使わない。しかし、その建物が勝敗に大きく関わってくる。商品の生産に必要な加工施設、出荷をサポートする造船所、市場への販売をサポートする商館等々、ゲームを有利に進めるには建物を上手く利用する必要がある。また、建物自体が勝利点を産むのも無視できない要素だ。なお、農地の開拓や人を雇うのにお金がかからない。どう考えても奴隷労働である。

少しややこしく思えるかもしれないが、基本的には商品の生産サイクルを作りながら、『本国出荷で勝利点を稼ぐ』or『市場販売でお金を稼ぎ、拡大再生産に繋げる』を目指していくゲームという理解で良いと思う。

もっともこのゲーム、手番でやること自体はとてつもなくシンプルだ。
すなわち、役職選んで、アクションを実行するだけ。
例えば農地の開拓がしたいなら『開拓者』という役職を、建物が建てたいなら『建築士』という役職を選ぶ、といった具合に。この辺りはちょっと『あやつり人形』っぽい。

ユニークなのは、選んだ役職のアクションをプレイヤー全員が実行するという点だ。
あるプレイヤーが『開拓者』を選んで農地を開拓したら、他のプレイヤーも順番に農地を開拓していくのだ。ただし、選んだプレイヤーには少しだけ有利になる『特権』がもらえる。

先ほどあやつり人形っぽいと書いたけれど、プエルトリコではあやつり人形ほど直接的な妨害はしにくい。むしろ自分の取ったアクションによって他のプレイヤーも利益を得るというのがふつうだ。そういう中で、なるべく自分の利益が最大化するように役職を選ぶ、あるいは他のプレイヤーの選択によって、自分も利益を得られるように立ち回るということが求められる。何というか、実に平和で、しかもえげつないインタラクションを楽しむことができるのだ。穏やかに微笑みながら、机の下でげしげし蹴り合っている感じ。こういうの、好き。

多くの先人が書いているように、ほとんど運要素がないため、実力の差が結果に反映されやすいという向きはある。そして、インタラクションが間接的であるがために、初心者が意図せずしてキングメーカーになってしまうという問題もある。

しかしまぁ、プエルトリコ界の頂点を目指すというのでなければ、遊び手の側でミスプレイなりキングメーカー問題なりに対して寛容な雰囲気を作ればいいのであって。先日はBSWで遊んだけれど、実際のボードで遊ぶなら、折角コンポーネントも綺麗なんだし、勝敗だけじゃなく、少しずつ拡大していくプランテーション農場(と、そこで重労働を強いられる人々)へのイマジネーションも大切にしたいものだと、わたしは思う。