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ボードゲーム会魔王の告知ブログです。

うちにあるスモール出版から出ているボードゲーム本を読み比べてみました

ここ数年スモール出版からボードゲームショップや有名ブロガーが書いたボードゲーム紹介本がちょくちょく出ています。
我が家には『ボードゲームカタログ』『ボードゲームワールド』『BOARDGAME GUIDE 500』それに最近買った『ボードゲームって本当におもしろいの?』の四冊がありますが、一口にガイド本といってもそれぞれに特徴があると思うので、この機会にちょっと紹介などしようと思います。


1.『ボードゲームカタログ』編:すごろくや

2011年9月発売
紹介ゲーム数:200
コンセプト:ボードゲームの専門店すごろくやが選ぶおすすめボードゲーム200タイトル

高円寺のボードゲームショップ・すごろくやさんが編んだボードゲームガイド。全ての紹介文にパッケージとコンポーネントの写真が載っていること、ゲームの内容紹介と、オススメポイントが別の場所に書かれていることにより、ひとつひとつのゲームのイメージを掴みやすい内容となっています。

取り上げられているゲームも一定の評価を得ているメジャータイトルが中心で、かつ幅広い年齢層に対応したラインナップとなっています。
「厳選した“一生手放したくないボードゲーム”全200作品」という文言は伊達ではありません。対象年齢や遊び方(Type)も記載されているのも好印象。

今回取り上げる四冊の中ではもっともスタンダードなボードゲーム選びのガイドブックだと感じました。その分、ある程度ボードゲームに精通している人にとっては物足りないと感じる部分もあるかと思います。また、2011年に出版されたものなので、結構な数のボードゲームが入手難となっています。2013年にスモール出版から同じくすごろくや編集の『ボードゲームカタログ 201』が出ているので今買うならそちらの方が良いのかも知れません(そちらはすいません、未読です)。


2.『ボードゲームワールド』著:小野卓也

2013年6月発売
紹介ゲーム数:100以上
コンセプト:著者が個人的に好きな10のテーマにおけるベスト10作品+ボードゲームに関する様々な読み物

Table Game in the Worldの管理人・小野さんによるボードゲームガイド。
個人的に好きな10のテーマというのが肝で、「グルメゲーム」「世界遺産」「農業」あたりはともかく「死」「トイレ」「タブー」あたりはそこを選びますか! と突っ込みたくなること請け合い。当然取り上げられているゲームも結構マニアックなものが多いです。
また、本書のもうひとつの魅力は20編の「ボードゲーム読み物」。有名シリーズの紹介にドイツゲーム小史、それに絶版ゲームの入手方法やボードゲーム八大地獄と、硬軟織り交ぜた内容で、どれも大変面白いです。

ガイドブックとしてはちょっと偏っているのかも知れませんが、小野さんのボードゲームに対する愛が溢れまくった一冊です。
目次を見てピンときたなら、その直感に沿うのが良いんじゃないでしょうか。



3.『BOARDGAME GUIDE 500』著:田中誠(テンデイズゲーム)

2013年9月発売
紹介ゲーム数:500
コンセプト:スコットランドヤードが発表された1983年から2013年までの30年の歴史を俯瞰し、重要タイトルをとりあげていく

今回取り上げた四冊の中ではもっとも紹介ゲーム数が多い本です。反面、ゲームひとつあたりの文章量は少なく、写真もパッケージのみ。記事を読んだだけでゲームの内容を理解することは難しいものもあるかと思います。したがって、ボードゲームガイドとして読むのであれば、この本はあくまで出発点であり、インターネット等でよく調べていく必要があると言えるでしょう。
一方で、ボードゲーム“史”ガイドとして読むこともできるのがこの本の特徴で、年代別にゲームを紹介する第一章、「3K」や「ドイツゲーム ニュージェネレーション」等、ゲーム史的に重要なテーマごとにゲームを紹介する第二章とも、ここ30年のボードゲームシーンを整理するのに役立つのではないでしょうか。

ちょっと文字が小さいのが気になりますが、折に触れて何度も繰り返し読み返したくなる本ですね。


4.『ボードゲームって本当におもしろいの?』著:ふうか
2015年4月発売
紹介ゲーム数:48
コンセプト:ボードゲームに遊び慣れていない9名による有名タイトルのクロスレビュー

ファミ通とかにあるアレですね。
クロスレビュー形式で、1個つのゲームにつき2ページの分量があるため紹介ゲームは少なめ。かつ、半分以上がドイツゲーム大賞受賞作なので、傑作・良作揃いなことは間違いありませんが、目新しさはないように思います。したがって「ドイツゲームのタイトルをほとんど知らないよ!」という方にとっては良いガイドブックになると思います。

くわえて本書はボードゲームの認知度が低いコミュニティにボードゲームを持ち込もうとしている人にとって良い羅針盤となるように思います。レビュアーたちの素の反応に触れることで、ボードゲームがどのように楽しまれるか、どのように楽しまれない可能性があるかを知ることができるからです。レビュアーたちは決してプロではありません。勝てたゲームと負けたゲームで評価を変えることもあるし、印象で運要素が強いと言い切ってしまうこともあります。だから参考にならない、のではなく、どうしてそう思ったのかを考えていくことで、よりボードゲームの面白さを理解することができるのではないかと思うのです。

オープンなボードゲーム会の主催をやっているわたし的にも大変参考になる本でした。
ただし、ボードゲームをそこそこ遊んでいる人がこれから買うゲームを探すには、本書は不向きなのだと思います。
あと、よく言われていますがちょっと本棚にしまいにくいです(笑)。


おわりに

今回はスモール出版の刊行物を四冊取り上げましたが、読み返してまず思ったのがそれぞれまったく異なるコンセプトで作られているということです。出版社と著者、いずれの功績なのかはわかりませんが、どの書籍も明確なコンセプトがあって、二番煎じにならないような工夫がこらされているように思います。
なのでこの中でどれか一冊を選ぶ! ということであれば、それぞれのコンセプトを確認して(できれば実際に手に取ってパラパラめくってみて)自分に合うものを選ぶのが良いのではないでしょうか。