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ボードゲーム会魔王の告知ブログです。

ミスボド行ってきました(2013年7月27日開催)〜駿河の魔王再臨編/ダンジョンクエストレポートその2

 
ボードゲーム「ミスボド」〜16品の殺人メニューに参加してきました。
以下は、遊んだゲームの一つ・『ダンジョンクエスト』のリプレイのようなものです(長文注意)。

 
序章〜魔王、演説す
 
諸君、私はダンジョンが好きだ
諸君、私はダンジョンが好きだ
諸君、私はダンジョンが大好きだ

洞窟が好きだ 迷宮が好きだ
尖塔が好きだ 聖墓が好きだ
城塞が好きだ 鉱山が好きだ
火口が好きだ 海底が好きだ
遺跡が好きだ

ルミガンに カシナート
アレフガルドに クリスタルタワー
世界樹に ハルドラ・イールに
アナイアス山に 闇の森に
京都に 東京に

この世界に存在するありとあらゆるダンジョンが大好きだ

隊列を組んだヌエが絶叫と共にパーティーを混乱させるのが好きだ
空中高く放り投げられたマッカがばらばらに飛び散った時など心がおどる

大賢者のあやつる魔物が前衛の首をはねるのが好きだ
悲鳴を上げて飛び出してきた後衛をマダルトでなぎ倒した時など胸をすくような気持ちだった

槍先をそろえたモムノフの横隊がパーティーを蹂躙するのが好きだ
強行奇襲の兵どもが既に息も絶え絶えな仲魔を何度も何度も刺突している様など感動すら覚える

敗北主義の逃亡兵が仲間たちの死体を寺院に運び込む様などはもうたまらない。
泣き叫ぶ兵士達が教父の突き出した手のひらになけなしの金を渡してばたばたと仲間をロストしていくのも最高だ

哀れな悪魔召喚士(デビルサマナー)が雑多な小火器で健気にも立ち上がってきたのを
物理反射(ギリメカラ)がCOMPごと木端微塵に粉砕した時など絶頂すら覚える

狂乱の角鹿に滅茶苦茶にされるのが好きだ
必死に守るはずだった仲間が混乱し、同士討ちを始める様はとても悲しいものだ

ワープの罠に押しつぶされて閉塞されるのが好きだ
転職したばかりの忍者が罠の解除に失敗して壁に閉じ込められるのは屈辱の極みだ

諸君 私はダンジョンを 地獄のようなダンジョンを望んでいる
冒険者諸君 君たちは一体何を望んでいる?

さらなるダンジョンを望むか?
情け容赦のない糞のようなダンジョンを望むか?
鉄風雷火の限りを尽くし三千世界の鴉を殺す嵐のような探索を望むか?

(クエスト! クエスト!)

 ――よろしい、ならばダンジョンクエストだ。 



第一章〜魔王、決意する

話は二ヶ月前に遡る!

駿河の国の魔王はまたも悩んでいた。
4月のミスボドで予想外の好評を博したダンジョンクエストだが、さすがにあの内容である。年内の再プレイはないかな、と思っていたところ、古くから付き合いのある勇者ZYOKOが無謀にも、

「実況動画見てたらやりたくなった」

こんなことを言ってきたのである。
無論挑戦されたら全力でそれに応えるのが魔王のつとめである。
オペレーション・ダンジョンクエストを再び発動することにいささかのためらいもない!

しかし、懸念はあった。

――他に人が集まるのか?

何しろクソゲー危険なダンジョンである。
多くのヘビーゲーマーが集うミスボドであっても、龍王のダンジョンに立ち向かう勇者は少ないのではないか?!

ええい、悩んでも仕方が無い。最悪魔王が勇者を兼任すれば良い!
そう考え、魔王はミスボド会場に再び恐るべき龍王のダンジョンを創ることを決意したのであった……


第二章〜魔王、焦る

事前の募集で二人の勇者がダンジョン攻略に名乗りをあげた。
一人は魔王の魔道高校時代の先輩・勇者ZYOKOである。
もう一人は魔道ソーシャルネットワークサービス上での募集で手を挙げた勇者カッチャマンである。

あと二人。あと二人集まればダンジョンへの扉は開くのだ!

「あ、mikioさんちーす」
「おー、カモくんと、イダくんじゃん。6時からダンジョンクエストやるけど君ら参加するー?」
「二人分空きあります? なら参加で」

割と軽いノリで、魔王の魔道大学時代の後輩・勇者カモと、その友人・勇者イダの参戦が決定!

がっ!

定刻になってから、アクシデント発生!
勇者カッチャマンが遠きイングランドの地でのクエストに手こずり、参戦が難しい状況に。
魔王、悩んだ末に勇者カッチャマンにごめんなさいして、ボードゲーム置き場で新たな勇者を募ることに。

「これからダンジョンクエストというひどいゲーム、あ、いや、ゲームと言っていいのかわからないな。ひどい何かをやりますけど、あと一名、誰かやる人いませんかー」

「やります!」

「!」

魔王は驚愕した。何と手を挙げたのは女勇者だったのだ!

「ええと、本当にひどいゲームですけど大丈夫ですか?」
「はい、興味あります!」

どこまでもポジティブな女勇者さとこを連れて卓に戻った魔王を待っていたのは、勇者ZYOKO、勇者カモの猛烈なブーイングだった。

「ちゃんとクソゲー、あ、いやゲームと言っていいのかわからないな。クソってことを説明したんですよね?!」
「あうあう」
「プレイ時間5分、ダウンタイム55分ってことも説明しないと!」
「えうえう」

きょどる魔王。しかし、女勇者の決意は固かった。

「大丈夫です。一緒に頑張りましょう」
「そこまで言うのなら……」(コクリ)

かくして四人の勇者が集い、新たな伝説が始まったのであった!


第三章〜導かれ(て)し(まった)者たち

勇者ZYOKO、勇者カモは事前に下調べしていたようだがともあれ全員が未プレイだったため、まずはダンジョンの掟についてインストすることに。

勇者イダ「龍王のダンジョンですか……? ドラゴンと戦うんですね?」
魔王「ククク。こいつはそこらのぬるま湯ファンタジーとはわけが違うのだよ。君たちにできることはドラゴンが眠っている間に宝を盗むことぐらいで、戦うだなんて、とてもとても」
勇者カモ「ドラゴンは本来人間の手には負えない存在ですからねえ」

そう。ダンジョンクエストではドラゴンを倒すことはルール上不可能である。
したがって勇者の使命は財宝(略奪品)を最低1つ持って、ダンジョンから脱出することなのだ!

その後、ルールについて簡単に協議。ルーン1枚・簡易戦闘(サイコロを使用)ルールの採用を決定し、いざ出陣。

スタートプレイヤーは勇者カモ、またの名を魔法使い・キャララ。
体力こそ低めだが、ダンジョンカードの引き直しができるため、リンデルと並んで初心者向きのキャラクターだ。

続いて二番手は勇者ZYOKO、またの名を騎士・ヒューゴー脳筋ぽいが割合能力のバランスは良く、しかも簡易戦闘ルールでは条件次第でサイコロを何回でも振り直せるため、強キャラの部類と言える。

三番手は勇者イダ、またの名を狂戦士・クラッツペッグ。脳筋ぽいが脳筋で、戦闘を回避することができない。能力が偏っているため正直、かなり使いにくい。体力がやたら多いことだけが救いか?

四番手は勇者さとこ、またの名をレンジャー・リンデル。平均的な能力と、判定におけるサイコロ振り直し能力故に、どんなダンジョンにも対応できる器用貧乏万能キャラだ。

なるほど、と魔王はほくそ笑む。このメンツならなかなか楽しませてもらえそうではないか。挑むが良い! 幾千、幾万の人命は死と死の暗夜に落ち行くであろう!(クワッ)


第四章〜魔王、再び焦る

あ、えっと。ちょっと待って。待ってくださいよ? こんな時は素数を数えるんだ。2,4,6,8,10……

魔王が開始二ラウンドにして早くもうろたえた理由。それはこれ。



秘密の通路を見つけた勇者さとこが壁を通り抜けて出た先……そこは袋小路だった。
何のアクションも行えなくなった勇者は窒息死するというのがダンジョンの掟。
探索可能なフロアなので、2回まで探索アクションを行えるが、それで何も見つからなかった場合は、ゲームから脱落してしまうのだ!

これもダンジョンクエスト。これがダンジョンクエスト。
しかし突発的な募集に手上げしてくれた女勇者に対していくらなんでもこれは理不尽な仕打ちではないか!

他の勇者達はボードゲーム神に女勇者の無事を祈った。魔王も祈った。
すると……二回目の探索で、カタコンベ(地下)への入り口を発見!

「やったー!」
「助かったー!」
「GMも助かったー!」

全プレイヤーが(魔王も)女勇者の無事に沸き立つ!


第五章〜女勇者、還らず

徐々に探索が進み、ダンジョンの全貌が明らかになってきた。
今回はやたら行き止まりが多く、勇者カモと勇者イダもカタコンベから財宝の間へと向かう構え。勇者ZYOKOのみ上階をそのまま進んでいく。

決して順調とは言えないものの時間も体力もまだ充分にある。

「今回割と余裕ですねえ。何とかなるんじゃないんですか?」
「ククク……このダンジョンではそう言ったものから死んでいくのだ!」

しかし、慢心していたのは勇者カモよりもむしろ魔王の方だったのかも知れない。
なんと勇者さとこがカタコンベを脱出し、財宝の間まで3フロアという距離に出現したのだ!
さらに回廊を抜けて財宝の間に到達。龍王の眠りを妨げることもなくあっさり略奪品をゲットし、最短ルートとなる勇者イダのスタート地点を目指す!

がっ! ここで痛恨の『底なしの穴タイル』引きっ!
数あるタイルの中でももっとも凶悪なこのタイルの効果はなんと『幸運判定を行い、失敗すれば即死』というもの。
かつてこのダンジョンに挑んだ勇者珠州も、このタイルの犠牲となっている……!

「ここでルーンを使います!」

勇者さとこはここでタイルの引き直しができる『変形のルーン』の使用を宣言!



頭脳プレイにより即死の危険を免れた女勇者は、程なく探索済みフロアに到達。
最早帰還は確定的に明らかになったかに見えた。

――まずい、このままではゴールされてしまう。

開幕即死とかそういうのは嫌だけど、勇者が無事帰還するのはもっと嫌。
魔王の心はダンジョンよりも複雑なのだ。

と、スタート地点まであと一歩というところまで来た勇者さとこの前にゴーレムが立ちふさがる! しかも、並み居るゴーレムの中でももっとも強力な、体力6のゴーレムだ!

「グオオオオン!」

既にここまでの冒険で体力を消耗していた勇者さとこは、咆吼と共に襲いかかるゴーレムに抗しきれず、文字通りあと一歩のところで命を散らしたのであった……

「フ、フハハハ。これこそが我がダンジョンの恐ろしさよ!」(震え声)


第六章〜魔王、確信す

勇者カモ「魔王に煽られてカタコンベ降りたけど……シャララの特殊能力が全く活かされないじゃないですか!」

シャララの特殊能力はダンジョンカードの引き直しができるというもの。
カタコンベではダンジョンカードを引く代わりにカタコンベカードを引くので、全く機能しない。そうだったそういやそうだった★

毒蜘蛛の群れに囲まれ瀕死になった勇者カモは、2分の1の確率で体力を回復することができる不安定な薬を飲み干すことに!

勇者カモ、カタコンベにて服毒死。

一方その頃勇者イダは火の付きが悪いたいまつと、落石に苦しめられ進むことも退くこともままならない状況。「6以上で判定成功です」(ジャラジャラ)「5だ! 1足りない」「7以上で判定成功です」(ジャラジャラ)「6だ! 1足りない」「8以上で」(ry

また、カタコンベに降りなかった勇者ZYOKOも良いタイルが引けずひたすら財宝の間の周囲を迂回する羽目に。ぐーるぐーる。

――最早、最短で戻ったとしても間に合うまい。

魔王は勝利を確信して口角を上げた。


第七章〜勇者全て斃る

「まだ、手は残されている」

ゲーム終盤、ようやくのこと財宝の間へと通じるタイルを引き当てた勇者ZYOKOは静かにそう宣言した。

「ほう?」
「禁断の書だよ。財宝の間で禁断の書を獲得すれば36分の1の確率で脱出できるはずだ」
「きんだんの……しょ?」
なにそれおいしいの?
「魔王、財宝カードの内訳しらねーのかよ!」



これがその禁断の書。あ、ほんとだ。

「やー、わたし司会進行専門の魔王ですしおすし」

あ、周囲の視線が冷たい。

「フハハハ、とは言えこれだけ多くの財宝があるのだ! そうやすやすとは禁断の書を取ることはできまい」
「出ました」

ガーン!

その後勇者ZYOKOは残るターン全てを禁断の書のロールに掛ける構え。
やはり最後の戦いはこうでなくてはな! って11! 心臓に悪いわ!

しかし勇者ZYOKOの快進撃もここまで。ほどなく目を覚ました龍王のブレスにより、まだ生き残っていた勇者イダ共々消し炭になりましたとさ。



終章〜魔王、迷走す

またも勇者は一人として生還することができなかった。
しかし、何故だろう。今回も彼らは実に晴れやかな表情で、

「面白かった! 僕の中ではこれ、全然ありですよ!」
「あの死に方なら悔いはない!」
「終盤何も出来なかったけど楽しかったです」
「一番最初に死にましたけど、見せ場は作りました。楽しかったです!」

とそれぞれの冒険を振り返るのだ。

相変わらず魔王はダンジョンクエストがゲームなのかどうか――そもそもゲームとは何なのかについて何一つわからないでいる。

ただひとつわかっていることがあるとするならば、魔王もまたゲーム性と言う名のダンジョンに囚われた冒険者の一人だということだけだった。


<了>

一緒に遊んでくださったみなさん、ありがとうございました!
今後も要望があれば持って行きますのでよろしくお願いします。